欧州の自然療法併用医療機関研修記(番外編)~バド・ガシュタイン坑道浴1~
オーストリア・ザルツブルグ市内より車で100分ほどのドイツとの国境に近い山間に、バート・ガシュタインのラドン坑道療法で名高いハイルシュトレインがあります。世界でも他に例を見ないこの坑道では、温泉の温度は37.5℃~41.5℃で、湿度は70%~90%と高く、空気1リットル当たりのラドン成分濃度は4.5ナノキューリー/Lと、温熱効果との相乗効果で高い治癒能力を有します。オーストリアをはじめとしてドイツやチェコにはラドン温泉治療を目的とした病院があり、ここハイルシュトレインの様に廃坑道を利用した施設は多くはありません。
特にこの坑道はもともと金が採掘されるとのことで、第二次世界大戦中にヒットラーの指示で連合軍捕虜や強制収容所のユダヤ人が働かされていました。当然捕虜やユダヤ人は食糧事情が良いはずがなく、他の種類の強制労働をさせられているところはバタバタと倒れ死亡する人が多かったのに比べ、坑道で金探しに従事している人はむしろ元気になる、という事実がありました。この元気になる素は坑道内のラドンであることが分かり、その後治療施設として発展してきたようです。温熱効果とラドン効果で新陳代謝を改善し、身体の抵抗力・自然治癒力を増強し、血行及びすべての体内器官を活性化します。オーストリアでは医師の指示のもと、民間保険会社の許可が下りれば保険でカバーされるようです。日本にもラドン浴は玉川温泉や三朝温泉等があり、賑わっているようです。
ハイルシュトレンのパンフには「身体が本来もっている治癒力と、炎症の鎮痛を促す成分が活性化される」と記載があり、エイジングに伴う関節疲労やリュウマチ性関節炎などに対する、持続的鎮痛効果や薬の軽減作用が実証されているそうです。また気管支などの喘息・呼吸系疾患や皮膚疾患などの免疫の強化に効果があり、健康増進と生活の質の向上につながる、とも説明書きもありました。(写真は施設入り口の前にある坑道トロッコのモニュメント)