虫歯発生のメカニズム
虫歯(デンタルカリエスまたは齲蝕)は人類の発生以降文明の発達と伴に存在した疾病で、医学の父ヒポクラテスは歯の中に悪液が貯留すると虫歯になると唱えており、その後長い間ヨーロッパでは歯の中に棲む悪魔が原因であるとされてきました。医学の進歩と伴に虫歯はミュータンス菌(Streptococcus mutans)やラクトバチルス菌(Lactobacillus)などによる感染症であることが分かってきています。さらに口腔内において唾液などの働きにより、歯牙の表面にCaなどのイオン類を補給し結晶化させる再石灰化現象よりも、原因菌の産生する酸などにより歯牙の表面からCaイオン類が溶け出してしまう脱灰化状態に傾くと、虫歯が発生することもわかってきました。
以前の学説ではカエスの輪でも有名なように、虫歯の発生は「糖質」、「細菌」、「歯質」の3要素からなるとされてきました。しかし最近ではアメリカカリフォルニア大学サンフランシスコ校歯学部のニューブラン教授が提唱する、前述の3要素に「時間」を加えたニューブランの輪が一般的になってきています。
また巷では各種イオン飲料が出回っていますが、特に内科医や小児科医に勧められたとのことでこのイオン飲料を日常的に頻回に摂取する傾向が見られますが、このイオン飲料が虫歯の原因となっている事実も見過ごせません。医科を受診した下痢や熱性消耗性疾患の患者さんが、脱水症を防ぐために推奨されるイオン飲料は、通常健康時には歯科的には害となりうる可能性があることを承知いただきたいと思います。