歯科の特殊性
歯科治療はその特殊性から、綿密な治療計画の下に時間をかけて根気よく精密で繊細な仕事が要求されることが殆どです。医学の分野では歯科は外科(Oral Surgery)の範疇に入り、その処置は手術と同じ意味を持ちます。また口腔内疾患を生活習慣から来るものと考えると、ヘルスプロモーションを行う上でオーラルヘルスの実践は大変重要なことと考えられ、歯科は内科(Oral Medicine)の側面を持つことになります。
Oral Surgeryではその処置(手術)部位は、閉鎖された生体腔の中だけではなく、口腔内の常在菌ならびに咬合、すなわち力学という名の恒常的破壊行為に常に曝される、という悪条件に耐えなければなりません。例えば歯牙(硬組織)は生体内部から外界に貫通しており、生体内部は歯肉内縁上皮で被われ、外部にある最表面はエナメル質という外胚葉性上皮により被われています。このエナメル質が破壊された状態が虫歯(齲蝕)であり、歯肉の内縁上皮が破壊された状態が歯周病です。
ちなみにここ十数年で一般的となってきたデンタルインプラントですが、口腔内に植立されたインプラント体と歯槽骨は?合こそすれ必ずしも両者は生物学的に完全に一体化せず、さらに歯肉とインプラントには間隙が生じています。閉鎖された生体内に埋め込まれた人工臓器や人工関節などに比べ、その環境において根本的なリスクが大きく異なります。したがってデンタルインプラント術の適応には、術前の十分な検討と対応が無ければその成功は難しいといえるでしょう。