口腔の健康と全身の健康の関わり
1996年にアメリカの科学雑誌「SCIENCE」誌に掲載された報告から、歯科なかでも歯周病学でPeriodontal Medicineという用語が広く用いられるようになってきました。このことは全身の健康状態が、歯周病などの口腔の健康に悪影響を及ぼすという事実のみならず、反対に口腔の健康状態が全身の健康に影響を及ぼすこともあることを認め、口腔要因と全身要因の双方向からその関連性を追及しようとする動きが高まってきたことに他ならなりません。
歯周ポケット内の細菌が、感染性心内膜炎に関係しているというアメリカでの報告をきっかけとして、歯科領域においてはエビデンスに基づき、世界中で年間200万件の科学論文が発表されていますが、日本からは臨床的治療指針に役立つものは必ずしも多くはありません。しかし日本歯科医学会では厚生労働省の後援で、委託研究課題ならびに総合的研究推進費課題のなかで「健康は心と身体は口腔から」のテーマのもと、EBMに基づいた研究が開始されています。
歯周病と糖尿病との関連性については、従来から症例報告をされてきていましたが、最近では疫学的調査の面から見ても、その報告は有用性を帯びてきています。また歯周病と低体重児出産や早産の関連性についての可能性を指摘する報告も見られるます。さらに女性では更年期以降に骨粗鬆症が頻発し、高齢者の骨折から寝たきりを誘発することが多く、ある研究者は閉経期以降の女性の歯周病患者は、一般と比較して骨粗鬆症の出現頻度が高いことを報告しています。