食育から知育・徳育・体育を考える ②
一般的には生後半年に下の前歯(乳中切歯)が生え始め、3歳時には上下20本の乳歯が完成しますが、実は歯が生える前から噛む訓練は始まっています。というのはお母さんの母乳を吸う行為は噛むことを覚えるトレーニングになっているからです。赤ちゃんがお母さんの母乳を飲む際には、乳首を唇で咥えるだけでなく舌を使って乳首を上顎の口蓋に押し付け、扱くことで乳汁の漏出を促す動作が見られます。その際には、あご,舌,くちびる,頭の脇の筋肉のすべてを使いますから、顔全体などの筋肉の発達が促進されることになります。これらの運動は赤ちゃんにとってはかなりハードなものですが、顔を真っ赤にして乳房に顔を埋める姿が微笑ましく、それで名前が付いた(本来は「赤ちゃん」の語源は、新生児が多血気味となり、皮膚の色が赤く見えることにあるそうです)ともいわれています。また新生児は鼻でしか呼吸で出来ない為、乳房から母乳を飲むという行為は鼻呼吸があってこそ可能となるもので、口呼吸が可能となるのは、生後しばらく経ってからとなります。鼻でしか呼吸出来なかったものが口で呼吸出来るようになったことは、人間の健康維持の上で様々な障害を招くことになります。
しかし一昔前の哺乳瓶による授乳は、乳首の部分の形態と材質から、使い込んだ哺乳瓶を逆さにすると人工乳がドクドクと垂れてくる有様でしたから、赤ちゃんはさしたる苦労もせずにおっぱいを飲むことができ、必要以上の人工乳を摂取することとなります。ここのところは最近ではメーカーも改善を加えているようですが、母親の乳房から母乳を飲むときと同じような負荷を哺乳瓶に与えることはなかなか難しいようです。また最近では核家族化が進み、育児経験者のいわゆる「おばあちゃんの知恵」が生かされる機会が殆ど無くなり、他人の子どもと比較することでわが子の優位性を確認したがる母親が増えた結果、いくらでも飲むからと言って安易に哺乳瓶で人工乳を与えてしまうことで、栄養過多の赤ちゃんが増えてしまうことになります。これはとりもなおさず生活習慣病の予備軍を作ってしまうことに他なりません。