西洋医学と東洋医学の両面からみた患者さんの管理について(3)
舌診は病気や生活習慣の結果として生じる全身の生理機能や病理変化を、舌所見を指標として判断し、健康維持や疾病予防、疾病改善、疾病治療に役立てることが出来ます。舌所見は全身状態の変化と対応している場合が多く、その特徴や所見をパターン化して整理しておくと、卒後間もないフレッシュマンでも臨床上非常に有効な診断法です。現代の臨床の場では、全身症状が臨床検査の結果として数字で表されることが多く、その評価にはバイオマーカーの種類によっては時間がかかり、また出てきた数値を増減させるだけの治療や指導になりがちです。更に生活習慣病やその手前の未病状態の場合には、その患者さんの生活背景に触れることはまず多くはありません。
舌診は全身状態の変化を平面的な数値の増減だけでなく、立体的に患者の生理機能や病理変化として捉えることが出来ます。そのような舌診をもとに簡単なアンケートに患者さんに答えてもらうだけで、患者の体質を「気」「血」「水」「熱」のそれぞれの過不足から来る8分類に分ける東洋医学的体質分類(仙頭征四郎先生提唱)が出来ます。
これに基づくことで、患者さんのう蝕や歯周病に対する感受性の有無を知ることが出来るばかりでなく、神経を取るか残すかを迷ったときや、観血処置当日の患者さんの病態を検査することなく即座に判断できる、などという点があり、非常に簡便に患者さん管理が行えます。したがって新患で来院の際には舌診で患者さんの体質を診断し、それによって得られた情報から患者さんからの申し出が無い場合であっても、怪しいと思ったら必要な臨床検査をほどこすという二段階方式の患者さん管理は、まさに西洋医学と東洋医学の融合であり医科領域で近年盛んに言われている統合医療を歯科に応用することに他なりません。