西洋医学と東洋医学の両面からみた患者さんの管理について(2)
誰でも一度は通るフレッシュマンの道ですが、ただひたすら時間を重ね経験が増えることを期待するだけでは、現在のような歯科医師過剰な時代には対応できないことになります。なぜなら医療機関が研修機関を兼ねて存在していない以上、結果論を用いて自己研鑽の積み重ねをするために、来院した患者さんを利用(実験台に?)することは出来ないからです。ではどうしたら良いのでしょうか?
西洋医学的に患者さん管理を考えると、今後の歯科医療において特にインプラントなどの観血的処置に入る前には、各種臨床検査がルーティンとなることでしょう。テクニックエラーは別として術前の各種検査を行うことでかなりの偶発症が防げるはずです。しかしながら血液や尿などのバイオマーカーを使用した検査は、必ずしも簡便・迅速とは言えないことも事実もあり、その点が開業医においてすべての患者さんのファーストルーティンとなり難い原因となっていることも否定できません。
一方の東洋医学的な患者さん管理は、根本的に西洋医学のそれと大きく異なります。中医学などの東洋医学はもともと長い歴史に基づく経験値がベースとなっており、EBMの点で評価されにくい側面を有します。しかし歯科診療を行うにあたって中医学は、前述の西洋医学的患者管理の欠点を補うにあたる非常に便利な診断法となります。中医学の代表的な診断法には舌診、脈診、腹診がありますが、脈診と腹診は必ずしも歯科診療室には適しているとは言えません。脈診は西洋医学のそれと異なり親指を除いた4本の手指で行いますが、診療用手袋の問題だけでなくその脈を読み取るまでには、多大な修練を必要とします。また腹診は文字通り腹部の硬さを手で押すことにより診断するものですが、これも修練を要するだけでなく腹部を露出させることが日常歯科診療においては馴染まないものであるので、患者さんが女性となると十分なコンセンサスが取れていなければ、ドクターハラスメントと誤解されてしまう可能性があります。