西洋医学と東洋医学の両面からみた患者さんの管理について(1)
高齢化社会を迎えた今、歯科医院を訪れる患者さんは一つや二つの基礎疾患を抱えていないことはない、といっても過言では無いでしょう。本人に病状の自覚があり内科などの受診経験があれば、本人の申し出により歯科治療に入る前に事前にチェックを行うことは言うまでもありません。医療連携で患者さんの基礎データーを共有し、また必要であれば歯科医サイドで各種メディカルチェックを行い、同時に医科的主治医のアドバイスを受けることで、安全に歯科医療を行うことが出来るようになります。これにより患者、歯科医師両者にとって、不幸な結果を招くリスクを可及的に減少させることが出来ます。
しかし厄介なのは内科などに受診歴がありながら、それをあえて隠し前面に押し出すことをしない患者さんや、その必要性を理解していないデンタル(メディカル)IQの低い患者さん達です。さらに近年盛んに言われている生活習慣病予備軍である「未病(みびょう)」状態にある患者さんに対しても、患者さん自身のみならず歯科医師自身もまったく患者さんが健康体にあるという錯覚が生じることで、歯科診療に入る前のメディカルチェックが省かれ、その結果不幸な医療事故が生じてしまう危険性が高まります。
経験が豊かな注意深い医師・歯科医師は、患者さんが診療室に入る時から(更に徹底した場合は患者さんの受付での応対から)視診が始まるといわれ、治療に入る問診のさらに前から患者さんの状態に気を向けているといいます。しかし卒業まだ日の浅い歯科医師は、日々の目先のテクニックに追われ、大事な患者さんという存在を忘れていることになります。経験が浅い歯科医師は口腔疾病という病のみ見(み)、中堅どころは患者を診(み)、そしてベテランは患者を看(み)ることが出来るようになると言われています。