喫煙と審美障害・口臭(いわゆる“親父臭い”匂い?)
たばこ中に含まれるニコチンやタールは、歯に沈着するだけでなく、歯と同色の白色コンポジットレジンなどの充填物、あるいはレジン系の修復物(被せ物)の変色や、アクリリックレジン系の義歯の変色を招きます。また歯周ポケットや舌苔の細菌が原因とされる口臭とは別に、喫煙による独特の口臭も存在します。これは肺胞中に沈着したニコチンやタール分が、呼気中に混じったものと考えられます。昼過ぎにニンニクやニラレバ炒めを食べた後、歯磨きせずに放置して食後の一服を吸い終えた歯周病の中年男性上司と、たまたまエレベーターに乗り合わせて会話をしなければならなくなった、部下のOLのAさんの悲劇たるや笑えたものではありません。ましてやタバコのヤニで汚く変色した前歯に、緑色のニラが挟まっていることに気づいたら・・・。これは実際に私の患者さんであるAさんから聞いた話です。
アメリカはKissとSmileの国と言われていますから、人と人の距離は日本に比べて非常に近くなっています。従って社会生活を営む上で清潔感が常に求められ、特に歯並びの悪さや口臭があることがマイナスイメージとなります。これらがあると会社での昇進にも関わるとのことですから、街のドラッグストアーにはこれでもかと言う位、オーラルケア用品が並んでいます。すなわち自己責任で自らの身体や健康を管理するのがアメリカです。それとは反対に日本はお辞儀の国です。お辞儀は相手への尊敬を表す行動(儀式)であり、日本古来より行われてきた人間関係を友好に保つ手段です。けれども相手に一歩下がって接するが故に、歯並びや口臭はそれを相手に知られない距離を保ちますから、アメリカほど口腔ケアが必要とされなかったのかも知れません。しかし今やグローバル化が叫ばれている今日この頃、日本人だって口臭や歯並びを気にする必要があるのではないでしょうか・・・。