喫煙と口腔疾患との関連
喫煙が身体に及ぼす悪影響は、肺癌をはじめとしてさまざまな病気として知られています。こと歯科口腔系にも以下のようなことが起こります。
1)口腔癌
口腔癌の発生頻度は喫煙が原因と考えられる癌のうち、喉頭癌、肺癌、咽頭癌に次いで高くなっています。口腔癌の発生頻度は舌(62.9%),口腔底(11.9%)、下顎歯肉(9.1%)、頬粘膜(7.9%)であり、直接喫煙による温熱刺激がある部分、またはニコチンやタール分が貯留する部分に多く見られます。
2)白板症
中年期以降の舌、歯肉、頬粘膜に見られる白色の口腔粘膜の病変で、前癌状態と考えられています。
3)ニコチン性口内炎
初期には赤く発疹のような状態であるが、その後灰白色になり皺状を呈し肥厚化し、白板症の前段階に移行する場合があります。
4)歯肉メラニン色素沈着症
もともと歯肉のメラニン色素沈着は、有色人種のみならず白色人種でも報告され、有所見率は5~100%と幅広く遺伝子の影響であるとされているほか、Addison病やAlbraight病などの疾病、HIV感染や各種薬剤との関連も指摘されています。しかし非喫煙者や喫煙経験者にも色素沈着が認められるため、歯肉のメラニン色素沈着があるからといって、喫煙者であるとは断定できません。非喫煙者では軽度沈着の者が多く、反対に喫煙者では中等度以上が多くみられます。色素沈着が広範囲な場合は喫煙者の可能性が高いと考えられます。