歯科と漢方
日本の漢方は、古代中医学が日本に伝来してきて、それが逐次独自の発展を遂げた伝統医学ですが、中国の伝統医学(中医学)とはその発展プロセスが異なったために、多くの共通点があるもののその特徴にはかなりの相違があります。
医科においては2002年度から、漢方薬が医学部教育の指導要綱の中に取り上げられ、2003年度からは国内のすべての医科大学、医学部で和漢薬治療に関する講義が行われるようになりました。歯科においては国立長崎大学歯学部などの2~3の大学を除いて、カリキュラムの中には取り入れられていないのが現状です。
口腔漢方の診断法は多くの場合、中医学の診断法に準拠し、視覚・聴覚・嗅覚・触覚をふんだんに駆使し、それぞれ望診(視診)・聞診・問診・切診(触診)の四診で行います。しかし歯科医師は常に口腔内を観察していることが多く、また歯科診療という制約があり他の診断法を行い難い条件があることから、望診の一つである舌診を用いることが一般的となっています。
現在の保険制度では、原則的に漢方薬として歯科疾患の治療の際に認められているのが、抜歯後疼痛や歯痛の緩和として立効散、口内炎の治療として半夏寫心湯、黄連湯、茵?蒿湯の四種です。保険制度上の問題もあり、当院では上記以外の処方を必要とした時は、漢方内科医と連携し当該処方をお願いすることにしています。なお私が所属する日本歯科東洋医学会では、現在歯科保険治療に漢方薬を幅広く使えることが出来るように、関係機関に働きかけております。