歯科診療前の東洋医学的体質診断について~はじめに
口の中の健康を保つためにはとにかく歯を磨くことが大事とばかり、一生懸命磨いてもすぐ虫歯になったり歯周病がなかなか治らないことがよく有ります。確かに『磨いている』と『磨けている』は大きく違います。朝から晩まで満点の歯磨きをするために、一日を過ごすのは気が重いですか?我々は歯を磨くためだけに生きているのですか?いいえ、生きるために歯を磨いているのです。ではどうしたら虫歯や歯周病は解決するのでしょうか。その答えは簡単です。80点以上の歯磨きをした上で自分自身の体質を知り、全身の健康との係わりを理解して日常生活の問題点を改善していけば(東洋医学では”養生”と言います)、虫歯や歯周病は予防できるのです。すなわちあなたが生活習慣病にかかっているので有ればそれを治す努力を、また病気の一歩手前(東洋医学では”未病”と言います)であれば、その前兆を感じ取り病気にならないよう用心することが大切です。
健康から未病を経て病気に移行する上で、人間の身体は様々なシグナルを発します。本来動物である人間の持っていた身体の声を聴く能力は、文明が発達し生活の便利さを得ることと引き替えに徐々に失われてきました。同時に自らの身体を癒す自然治癒力も失われてきてしまったのです。今ここで我々が享受している現代文明の弱点を反省し、西洋医学の利点は生かしつつ東洋医学的思考を生活に取り入れていくことこそ、21世紀の健康法であると考えます。
中医学では「気」「血」「水」のそれぞれの過不足(実と虚さらには陰・陽)で体質を分類していますが、私は10数年前に仙頭征四郎先生の「読体術」のセミナーを受けて以来、さらに「熱」を加えた4項目の過不足で患者さんの体質を診断しています。患者さんからご自分の体質を知りたいとお申し出があれば問診の上ご説明致します。またそこまで必要のないとお申し出が無い方でも、「舌診」を応用して患者さんの体質を当院で鑑定し、歯科治療の参考にしております。次回から「気」「血」「熱」「水」の過不足による体質と歯科疾患の関係を述べていきます。