歯科医療と代替医療
欧米など先進諸国では、代替医療あるいは補完医療という名の下に、西洋医学以外の伝統的医療を含むあらゆる療法が再認識され、大学等の機関で教育、研究が為されてから随分と時間が経過しました。其処に至るきっかけとしては、例えば医療保険制度の崩壊をみたドイツや、生活習慣病の蔓延で医療にかかる予算が軍事予算を脅かさないようにするための配慮?と思われるアメリカなどと理由は様々です。いずれにしてもその根底には、文明文化の成熟後に起こる自然回帰の潮流がある、と言っても過言ではありません。
アメリカ合衆国では、1992年NIH(アメリカ国立衛生研究所)で代替医療の研究が始まり、2004年のNIHにおける代替医療研究予算は推定2億ドル(約260億円)でNIH全予算の1%を占めました。またハ-バード大学医学部をはじめとした、全米の20の大学で代替医療研究センターを有しています。さらに現在では全米の医療機関中、何らかの代替医療的方法を取り入れているところが、半数を超えたと聞きます。
医療がCUREからCAREに変遷した欧米では、ヘルスプロモーションの実践のため、鍼灸・漢方などの東洋医学的伝統医療を併用することに主眼を置き始めたことになります。それを目にして驚いたのが、医療の先進国である欧米に留学していた中国の若手の医師達です。中国では鍼灸・漢方などの中医治療は、西洋医学に比べ数段低い評価であった為(これは恐らく文革時代の“はだしの医者”に起因すると思われます)、最新医学の修得のために留学したアメリカでそれを見聞きしたことにより、彼らは自分の国が発祥である中医治療を再認識せざるを得なくなりました。これは私が2000年に中国の北京大学で開催された、第1回中日中医学口腔疾病中医治療学術検討会に出席した際に、現地の医師から聞いた話です。