フードファディズムとメディアリテラシー
今の日本人は国民皆保険のためか、些細な病気でもすぐに医者にかかり、大量の薬を処方されても自己判断ですべての薬を飲まないでやがて捨ててしまう、という矛盾した行動をする人が多いようです。反面現在日本では健康ブームで、テレビや雑誌、新聞等のマスメディアでは健康情報があふれていて、それを実践する人も多いという矛盾が生じています。
食べ物や栄養が健康と病気に与える影響を、熱狂的に過大に信じることをフードファディズムと言います。医学的に立証された事実(エビデンス)以上の内容が、本人の期待と重なって過大に評価され、実際の食生活に影響を及ぼすバランスを欠いたパラノイア的な行動です。
朝や昼のテレビの健康番組で取り上げられた食材が、その日の夜にはスーパーから姿を消し、しばらく売り切れになるなんてことはしょっちゅう起こっています。また〇〇が体に悪いと言われると、その食品の良い点はすぐに切り捨てられ悪い点だけが独り歩きしてしまいます。○○だけ摂っていればそれで充分、などということは絶対にありません。何事もバランスが必要です。また人間には体質がありますから、ある方にとっては良いものでもある方にはさほどでもない、などということもあり得ます。また子供や大人でも状況は変わります。
以前保健所の1歳6か月健診の担当医をしていた時、見るからに栄養状態の悪いお子さんがいたので、その子のお母さんに声を掛けたところ主食のみ玄米しか食べさせていないことが分かりました。1歳6か月児には玄米のみでは栄養不足になるからと説明しても、お母さんは私が玄米を食べて健康を維持しているので大丈夫ですと取り合ってもらえませんでした。まさにこれがフードファディズム。情報が氾濫している現代では、何が正しくて何が悪いかをじっくりと見極める必要があり落ち着いて情報の取捨選択をする能力(メディアリテラシー)を高めるために、自分自身の体を見つめ勉強をすることが肝要です。