良質な睡眠をとるために(4)歯科的アプローチ
睡眠医療はその根本から考えると、非常に多岐にわたる分野が関わるため、各診療科目とのスムーズな医療連携を必要とします。実際に我が国では歯科以外に、呼吸器科、循環器科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神・神経科、心療内科、小児科等が治療に当たっています。
平成16年の歯科保険改正で、睡眠時無呼吸症候群に対する装置作製が保険に導入されました。これは医科から文書提供による歯科用治療装具の作成依頼があって、初めて保険適用されるものです。医科保険において睡眠時無呼吸症候群は、適用となる無呼吸回数を上回らないと、持続的気道陽圧療法(CPAP)が使用できないため、歯科における口内装置の保険適用の意義は大きいと考えます。
1.口腔筋機能療法
いびきの原因である舌根沈下を単に重力だけでなく、口唇閉鎖力の低下ならびに舌筋の機能低下が関連していると考え、メディカルパタカラを使用した口腔筋機能訓練を指導しています。
2.枕指導
筆者は枕研究所を主宰する整形外科医の山田朱織医師の提唱する方法を応用し、イビキや歯軋り患者の枕指導を行っています。
3.歯列矯正
特に小児期の歯列狭窄があるイビキの場合、拡大床を装着することで顎の前後的、側方的拡大が得られ口腔内容積が増大し、成長期特有のリンパ組織の肥大が収まり、これによりイビキが消失することがあります。
4.タングポジショナー
小顎症や狭窄歯列があり舌根沈下を招きやすい患者が、歯列不正があるが歯列矯正を望んでいない、あるいは歯列矯正をするほどでない場合、パタカラとの併用でタングポジショナーを用いて、正しい舌の位置を習得させるような指導をいっています。
5.スリープスプリント(口腔内装置)
スリープスプリント(口腔内装置)は文字通り睡眠中に口腔内に装着するものですが、顎口腔系の生体調和を多少なりとも乱す可能性があることから、その適用には充分な注意と配慮が必要です。