短大養護教諭養成課程での講義その2
先月11月1日に行った特別講義についての続きです。
健康寿命の延伸を阻むことになる長期にわたる不適切な生活習慣からくる「生活習慣病」の素地である「未病」状態は、学童期から始まると言われ青年期や壮年期に気付いてもなかなか元の健康な状態に戻すことが困難となります。そこで学童期に「自分の健康は自分で守る」という姿勢を植え付け、「病(やまい)」への気付きから「自己実現」へと目指す教育が必要となります。学校は心身の発育・発達の途上にある子どもが、教育や原体験を通して人格の形成をしていく場所であるため、「自立的健康づくり」が出来るよう指導環境が整っていなくてはなりません。
しかし健康そのものに対する認識が低く家庭での基本的な「健康教育」がなされていない子どもに、病気の実体が見えない生活習慣病を理解させることは容易ではありません。国民病とも言われる歯周病は生活習慣病であり、毎日の食事を通して発生した歯垢(デンタルプラーク)がその原因となり、同時にウ蝕の原因ともなりますから、鏡などで容易に観察できる歯や歯周組織は極めて貴重な生きた学習教材となります。歯垢が付いて発生した初期虫歯や歯肉炎が、適切なブラッシングや生活習慣の改善で目に見えて良くなる体験を通して、「自分の身体は自分で守る」「身体の声を聴く」という能力が身につき、子どもたちの生きる力を育むことが出来ます。
このような理由から学校保健における歯科保健は我々学校歯科医だけでなく、日頃子どもたちと接している養護教諭の熱心な取り組みがあってこそ意味のある活動となります。
90分という短い時間でしたが、将来養護教諭になるであろう学生さんに学校保健活動における歯科の重要性を少しでも理解してもらえればとの思いで講義をしました。