歯科領域の痛みについて(1)
2009.4.1
我々歯科医師は日常臨床において、患者さんから何らかの痛みの訴えを受けることなく一日の診療を終えることは無い、と言っても過言ではないでしょう。歯科医院で扱う痛みには、虫歯による歯痛、歯周病の急性発作による歯肉の痛み、義歯の当たりによる歯肉の辱創性潰瘍の痛み、あるいは顎関節症の際の関節や筋肉の痛みなど多岐にわたります。
傷んだ歯を抜歯して痛みを止めるという行為が為されてきた古代より、近代歯科医学が確立された19世紀から20世紀にかけて、歯科治療の変遷は痛みをとる、すなわち徐痛の歴史そのものであったと言えます。さらに歯科医療の主体がキュアーからケアーに変わった現在においても、抜歯自体が少なくなったとはいえ、「痛み」に対する処置の必要性は相変わらず存在しています。
むしろ現代特有のストレスを始めとする各種痛みの要因が増えただけ、その対処法(根底に出来るだけ歯牙を保存するという理念が有る以上)が確実に増え、複雑になってきているというのが現実です。しばらくの間口腔領域の痛み(口腔顔面痛=Orofacial Pain)の中で、歯の痛みを有する疾患を歯原性歯痛と非歯原性歯痛とに分け説明していきたいと思います。